第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(22)

『世界は君であふれている~七周目のメリーゴーランド~』/やましたいちか 

 あらすじ&コメント

影山千尋は、人見知りが激しく、いつも自分に自信がない。一方で、妻の怜は結婚後もナンパされるほど可愛い。バランス悪そうな夫婦だが、大の仲良しだ。なんでも相談し合い、記念日にはプレゼント交換し、ラブラブなセックスをする。これ以上ない幸せな結婚生活を送っていた。しかし、結婚して6年が過ぎたころ、怜が体調を崩す。病院で検査を受けた結果、医師から末期のすい臓ガンを告知される――。

怜にもらったプレゼントは、包み紙までとっておく。そんな千尋の繊細で愛らしい思いに思わず泣きました。二人だけで決めた「お付き合いの手順」やセックスの最中の合言葉は、カップルでここまで話し合うのが理想だなと思えました。「叶えたいことリスト」のエピソードも、ほほえましく心がほんわり温かくなります。あげればきりがないほど、独自の発想と工夫で、二人の関係の細部を描いていて驚きました。ここぞというところで読み手を泣かせるツボもおさえています。ですから、部分部分は高得点。ただ、話の筋がわかりにくいので、全体の構成は大幅に直す必要があると思います。また、このあらすじは、あまりにも昔から数多くあるもの。サイドストーリーもうまく挟まれていますが、「よくある話」という印象がぬぐえません。異なる物語を、ぜひもう一本、書いてみてください。

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